競争激化の時代。今は、お客様ニーズに沿って、よりスピーディーに商品を提供することが重要です。企業は、なんとしても競争に負けたくない、ということで、あらゆる手段を使って、躍起になり、商品を開発しています。
どうしても他社に負けぬよう、いち早く商品を提供するためには、今よりもさらに効率化を図ります。
効率化といっても、たくさんの手段が存在します。無駄な作業の削減、開発のルーチン化、自社の開発を他社に外部委託する、など、さまざまです。
その手法の中で、わたしがもっとも恐れているのは、開発のルーチン化です。開発のルーチン化とは、マニュアルなどを作成して、開発のやり方をルーチン化するのです。
一見、企業からしたら、とても有益な手段でしょう。開発をルーチン化しておけば、開発スピードも格段に上がるでしょう。
そして、誰でも作業ができるようになります。誰でもできる仕事に変えてしまうのです。
実は、これが効率化の怖いワナ。誰でもできる仕事というのは、裏を返せば、自分じゃなくてもできる仕事になるのです。そうなると、人は途端にやりがいをなくします。
人というのは、自分しかできない仕事があり、自分の存在価値が認められることで、仕事にやりがいを見出します。しかし、それが得られないと、やりがいをなくしてしまうのです。
そんなやりがいのない思いで作った商品、作り手は自信を持って送り出せますか。お客様が満足いくものになりますか。
ものづくりは、人の心が作っているのです。ロボットが作っているわけではありません。
ここのところを経営に携わる方にご理解いただきたいです。
開発のルーチン化は、スピードも格段に速くなり、誰にでもできる仕事に変えることができ、大変魅力的です。しかし、一方で、人の心を蝕み、恐ろしいワナが潜んでいます。
やりがいを搾取します。お願いです、効率化の前に、人の心を大切にしてください。